「高橋碧(みどり)です。よろしく…」
新しいクラス。
必要最小限の自己紹介を終えて、俺は席についた
みどり、なんて嫌な名前だ。
ガタイいいのに女みて〜だし、嫌んなる。
早速、頭の薄い担任が
「いや〜碧なんて可愛い名前だなあ」
とか言いやがって、何人かが笑う。
ま、毎度で慣れてるからどうでもいいや。
…てゆうか…。
今朝見たあいつが、まさか同じクラスとは思わなかった。
斜め前にいる。
キラキラ光る髪、長い睫毛…大きな目。
日に透けて消えてしまいそうに儚い。
隣の女子もあからさまにみとれているのに苦笑してしまう。
俺もあんなかな、なんて
そして奴の番になる。
「中崎翔です。磯中からきました。
よろしくお願いします」
声まで透き通るみたいだ
僅かに見せた笑顔の可愛らしいこと。
…ヤバい、ヤバい。
こいつは、ヤバい。
女っぽいわけでもないのに、マジでみとれてしまいそうになる。
俺は無理矢理視線を外して…はじめの1日が終わるのを待っていた。
今日は初日で午前で終わるし。
マックにでもよろうかな…などとボンヤリしていると、頭の上から声が降ってきた。
「おい、お前…えーと、碧だっけ」
へ?
ギョッとして見上げると あの、完璧なアンドロイドが俺を見下ろしていた
…いま、こいつが喋ったんだよな?
黙って見上げる俺に、綺麗な顔が歪む。
「…お前、今朝、俺にガンつけてたろ?
言いたいことあんなら、言えよ」
…ガン?
…ちょっと待て。
花びらみたいな唇から吐き出される似合わない言葉の嵐。
「んだよ、てめ〜」
…ヤバい、俺、笑いそ…
「ぷ」
抑えた笑いが出た瞬間、勢いよく胸ぐらをつかまれた。
「なに笑ってんだ、この…」
「ば、違うって、ごめんごめん」
立ち上がると、まるで子供に突っ掛かられた大人の図だ。
身長差が頭一つ分以上ありそうだ。
…これはちょっと…。
「…で、でかいなお前
…でも俺は言いたいことは言う主義だ!」
…なにコイツ…。
か、可愛い。
「…言えば?」
「…だってお前、俺を見てたろ?
なんだよって思うだろ?…も、もういいっ」
言いたいこというっていったくせに、いきなり膨れて背を向けた。
…ちょっと待て。
俺、新学期早々…ヤバいんじゃないか…?