「え〜と、中崎だよな。だから、ごめんって」
「…なんだよ、拍子が抜けるな…てっきりケンカ売ってるんだと思ったのにさあ」
ぶ〜っと膨れている。
「違うよ、お前のその髪がさ…目立ってたから」
「髪?…ああ、なんだよ…もう。俺のこれ、地毛なんだぜ?
俺、クウォーターだし。4分の1ロシアの血が入ってんだってさ…笑えるだろロシアなんて」
からっと弾ける笑顔。
くるくる回る表情に魅せられてしまう。
面白いやつ!
「なあ、俺のこと翔って呼べよ。俺もお前のこと碧ってよぶ!
いきなりキレて悪かったな、まあ、許せ」
本当にギャップある奴。
さっきまで怒っていたのにもう笑ってる。
「ま、よろしくな」
俺もつられて笑ってしまった。
次の日から、俺達は急速に親しくなった。
バリバリの進学校で、こんな風にバカ笑いできる相手に出逢えるとは思っても見なかった。
翔を知れば知るほど、見た目との違いに驚かされ…徐々に見た目など気にならなくなっていった。
「なあ、碧!俺さあ、実は不安だったんだよな」
「なにが?」
「俺さ、中学んときからちょっと浮いててさ…ほら外人ぽい顔だろ?
だから色々やなことあってさ…」
なるほど。
だから過敏に反応するわけだ。
「だけど、友達が出来て本当に良かった!
進学校なんて行きたくなかったけどさ…面白いやつもいたんだな」
いちいち素直に感情をぶつけてくる。
そのわりに、女子どもの視線には鈍感だ。
中学のとき浮いていたってのもある意味、注目されていたんだろう。
「俺も翔がいてよかったよ、飽きない奴だもんな…お前って」
それは本当だ。
他の連中と違って、俺らはいつもくだらない話をしては笑っている。
鬱になりそうな高校生活が前向きになれる。
それに意外と翔は頭がいい。
「数学って簡単じゃね?明確に答えあるし。
俺、現国とかのが苦手だしさ」
ある日、俺が一人で登校していると背後からポンと背中を叩かれた。
「あの、おはよう…高橋くん」
「あ、ああ、おはよう」
…誰だっけ?
うちのクラスの女子であることは間違いないが…
「あの、これ…中崎くんに渡してくれる?」
可愛らしい手紙。
…これは世に言う…
らぶれたあではなかろうか…?