江戸の昔からの「近江女のDNA」などと言いましたが、政争、商いの具に使われて来た、その血とは別に、
オークションに掛けられ品定めをされ、買われて、他人や主人の目の前で男に抱かれるイビツさ、回数も二回か三回だろうと言った店長の言葉が日に日に日に大きく、三半器官の奥から太鼓のように響いて来るのでした。・・むしろ、売れ残った時の恥を恐れるようになってさえいたのです。
考えて見れば不満とは思いませんでしたが、長いこと主人との夜の生活もありませんでした。
「奥さん、和服が似合う、襦袢を着て下さい!高く売れます!私もいい男に買って欲しいから」店長は何度も言ったのです
その時にはもう「キチンとアップに纏めるのではなく寝乱れた髪をしどけなく後ろでクリップで止めて、真っ赤な長めの襦袢に白い男物の絞りの帯をしめよう」と決めていました。
私は本来、淫乱な女だったのです。だと思います
「オークションには五組の夫婦が出場します。〇〇〇〇号室で、早い順に奥さんだけシャワーを済ませ、お二人とも仮面を着けて待機して下さい。仮面は更衣室に準備しています。ドアを開けた隣がオークション会場です。呼ばれたらご主人が奥さんをエスコートして下さい。小さなステージがある筈です」
二回目の電話が店長から掛かった時、メモをする手がブルブル震えました
詳しく言います。(恥)
アクメを迎えたのです。
「金曜日。19時。〇〇国際観光ホテル。〇〇〇〇号室。シャワー。主人、隣。エスコート。ステージ、小さな。…判りました!」名詞と言うか単語を羅列して相手の声も聞かず電話を切ったのです
脇汗が流れ、ガチガチと歯が鳴りました。
私は自分を判っていました。こんな時、自分はどうなるかを。
私は主人に一つだけですが大きなウソをついたのです。日時、場所、部屋番号、段取り・・全て事実を伝えて、最後に
「オークションだから私、買われるらしい。売れ残ればいいけど・・売れたら嬉しい顔をしろって!買ってくれた人に失礼だから、喜べって言われた!・・で、その〜、だ、抱かれた時も・・嘘でもいいから悦べって!声出して感じた振りをしろっていうの!・・マグロじゃダメだ、自分から積極的に、だって!・・どう思う?あなた。お芝居しなきゃダメかなあ?私出来るかしら・・」