ラブレターを渡せないまま、昼休みになってしまった。
なんか気まずくないか?
あの女子、直接翔に渡してくれたらいいのに!
俺は多少イライラしつつ
ドカベンをかっこんでいる翔に声をかける。
「なに?…なあなあ、この冷凍の唐揚げって結構うまいのな〜♪♪」
いや、この際唐揚げの情報はいらない。
「ほら、これやるよ」
薄いピンクの可愛い手紙を渡す。
俺が恥ずかしいのはなんなんだ…↓
「…ナニコレ」
綺麗な顔が台無しなくらい飯を突っ込んでる。
弁当をどけると、無造作に手紙をあけた。
「え、お前ここで読むのかよ」
「…だってただのラブレターじゃん」
…え。
なにコイツ。
意外にも速攻で理解してんじゃん。
「うわ〜。俺、鳥肌立ってきた」
あからさまに嫌な顔。
次の瞬間、翔は容赦なく手紙を引き裂いた。
「わっ!おま、ちょっと…酷くね?」
翔はさっきまでの無邪気な顔を完全に封じた。
見たこともないような、嫌悪感丸出しの冷たい瞳に俺は固まる。
「酷い?どこが?
こういうの中学んとき山ほど貰ったけど…みんな内容おんなじなんだ。
一目みたその日から…とかさあ。
コイツらが俺の何を知ってんだよ?
話したこともねえのに、好きだなんて笑わせんなって」
怒りに顔を歪ませる。
「…翔、落ち着け」
クラスの奴等が俺達を注視しているのに気づく。
あの女子は真っ青な顔をして俯いていた。
余りにも気の毒で視線を逸らす。
彼女が今、教室を飛び出せば、ラブレターを書いたのは私です、と宣言するようなものだから出来ないでいるのだ。
翔は酷薄な言葉で意図的に彼女を責めているのだろうか?
なんの為に?
そんな意地の悪いやつじゃないことを俺は知ってるのに。
「見てんじゃねえよ、暇人ども」
捨て台詞を吐いて、教室を飛び出したのは翔の方だった。
俺は慌てて後を追っていった。
静まり返った教室に居づらかったのも確かにあるけれど。