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夫の三回忌 <4>

松本房恵  2009-10-05投稿
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「奥様、聞かせて下さい どんな悩み、ストレスをお持ちなのか?私ども〇〇宗の若い僧侶にとって、宗派の拡大は死活問題なのです。佛教界では水面下での競争なのです。門徒の悩みストレスをどのように取り去るのか、これからの〇〇宗の使命なのです!」範良様は真剣な眼差しで話すのです

「それは、いっぱいあります。恥を晒すようで、恥ずかしくて…申し上げられませんが…それは、いっぱいあります」
私は、日頃の鬱憤、今日の三回忌法要に関する夫の実家とのいきさつなど頭に浮かび、ムキになるように言葉が口をついていました。

「私はね、この堅伸君も同じですが、本山に僧侶に『臨床心理士資格』を義務付けて欲しいと具申してるんです」
「リンショウ、シンリシ?ですか…何でしょう、その資格って」尋ねると
「臨床心理士です。国家資格でして、人の心をケアするんです!大事な方を亡くした檀家の残されたご家族の心をケアするところまで、私ども〇〇宗の僧侶が面倒を見れたら素晴らしい!。キリスト教では当初から「懺悔室』があるのに!」
「ザンゲシツ?」
私が首を傾けると、
「キリスト教では、教会に行くとね、懺悔室という部屋があります。壁の向こうに牧師が居て、悩みを聞いてくれるんです二人だけの部屋で!話しを聞いた牧師は、それを誰にも話してはならない!例えそれが、過去に犯した殺人を犯した人の秘密であっても守られます。警察に届けたりは出来ません!つまり、牧師は神に成り切るのです」
「どんな秘密でも…ですか?守られるのですか?
それを、〇〇宗でも?…お坊さんが…牧師さんのように?仏さまになるのですか?お坊さんが!」
「恥ずかしいことでも?何でも?ですか…秘密が守られると?」
私が続いて尋ねると、
「何でも、です!その時抱えている悩みストレス、何でもです!」
範良様はビールを傾けながら言います。
私も一気にビールを煽っていました。
義父母と打ち合わせた三回忌の段取り…お布施の金額、料理のグレード、お客の足代、呼ぶメンバーなど、など、など、等
腹立たしいことばかりが続いていたのです。
「話せたらどんなにスッキリ、気持ちいいでしょうね?」
私は羨望の眼差しで、言葉を吐き出していました

「奥様、佛教ではキリストの代わりに如来様が本堂におります!」

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