「あのなぁ、隆!お前が自分で抱くとしたらどんな女を抱きたい?
しかも、一昨日も昨日も女を抱いて、もう満腹だけど、『あの女なら今日もヤってもいいな!』と思うような女を、だ!たくッ、そんな女に配るんだよ!チラシは!…配りゃ良いってもんじゃネェ!…たくッ、どうなってる、お前の前立腺は?!」
私は対面でナイフとフォークを動かす隆に小言を言った。
「ゥフフフ…無理ですよ、社長!隆にはまだ!感性が磨かれてないもの。その場で女の心理を読むのは、まだまだ無〜理!」横から紗耶香がナイフを振りながら言う。
かと言って私は二人を酷使しているつもりはない。紗耶香に日給三万、隆に二万円渡し、夕食はミーティングを兼ねて三人で深夜に行い、私持ちだ。
フォーシーズンにはユニフォームであるスーツを二人に仕立ててやっている。……面談に来た女に、チラシをどこで受け取ったか聞いた結果から、二人の賃金を決めてある。が、ここらで賃金形態を考えなきゃならない!
「社長!早く今日の成績聞かせて下さい!何人でした?面接応募。あっ、私、当てましょうか?」
紗耶香は四年制の国立大学法科を出た元国家公務員だ。頭がいい。
私は黙ってタバコに火を点けた。
「三人!」と紗耶香。
「隆、お前は?」と私。
「五人ですか?」と隆。
「勘だけはいい!隆が正解!五人だ。明日、面談一気に済ます!昨日の残りを含めて九人!明日は俺の分も二人でカバーしろ!給料日前の金曜日だ上玉が多いぞ、隆、篩の目を粗くしてな!紗耶香は隆と連絡を蜜にして!」
隆が嬉しそうな顔をした。頭は悪くないのだ。
育ちの良さを思わせる大学卒の我社のホープだ。
多分、受験戦争の中で塾通いで生きたため、女気が全くないだけだ。
隆には別の重要な任務を与えてある。
「残念!!でも社長、明日は凄い美人が面接に現れます。私、保証します」端正な顔で紗耶香が言う。勿論、まだ肉体関係にはないが…スーツを着てオシャレして街を一緒に歩くと男は振り返る。
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「そうか?楽しみだ!ご苦労だけど、PCメールのチェック頼む!年末には南の島に三人で脱出するんだろ?必ず行こうぜ!」私は伝票を摘んで立ち上がる……。
明日は一人一時間としても重労働だ。