「着いたわ!五周しますからね、頑張って!」
麻理が言うと、
「ちょっと、一休み、しよう!」
幸男は立ち止まって汗を拭いている。
「ダメよ、休んじゃ!直ぐに元に戻っちゃう!」
麻理はバック歩きしながら幸男に言った。
「誰かが、この汗、豚汁、と言ってたが、全くだな!よく、出るよ。」
10mあと位を着いてくる
15m間隔で設置された街路灯の下を、顔馴染みとすれ違う。挨拶を交わす何処の誰かは知らないこの公園でだけの友人だ。
……「はーい!これで一周!あと、四周よ!」
麻理が言うと、それでも結婚前はサッカー選手だけあって、幸男はついてくる。が、ものは言わない!黙々とついてくる。
二周目に入ると、すれ違う人も少なくなってくる
麻理はいつものように、遊歩道をジグザグにツイストを踊るように腰を捻りながら歩いた。
「あなた、きつい?疲れた?…私、おトイレ、行きたくなっちゃった!公園の中まで一緒に、行って、お願い」
麻理が言うと幸男はホッと安堵したように頷いた
*****
「アキラ!女は一人ったろ、お前!二人じゃネェか!バカヤロ!」
ツツジの植え込みの間に潜んでいた四人の内、幹男がニット帽をかぶった明の頭を小突いて言った
「カッシーなあ!いつもは一人なんだけど…」
明は帽子を被り直しながら言った。
「けどよ、明、お前が言うように、いい体してるじゃネェか…今が旬だぜ」と幹男が顎をなでた。
その時、男と女は遊歩道を外れて、公園の中へと入って来た。
「オイ!チャンスだ!二人とも掠っちまおう!…多分、トイレだ!どっちか入った時、一人ずつヤレ!…泰司、あれ、準備いいか?」
泰司はニット帽を引き下ろし、目だし帽にしながら頷いた!
*****
麻理は用を足し、ポケットティッシュを引き出そうとした時、外で人が争うような物音を聞いた。
トイレの回りを駆け回るような男がして、ウッとかアッとか短い声が聞こえて……静かになった。
「…あなた…?」
麻理がドアを少し開けて幸男を呼んでみた。突然外から強い力でドアが引き開けられた!
麻理の目の前に二人の目出し帽の男が立った!
「あなた?夫婦か?旦那はおネンネ中!来な!」