デパートで待つ間、ドキドキした。化粧もするつもりだったけど、あんまり気合いが入り過ぎだと思われたくないので、少し色の入ったリップクリームだけにした。
「麻緒」
伸二は、またアタシを上から下まで眺めた。
「ジロジロ見ないでったら」
アタシは恥ずかしくて先に歩き始めた。
(似合ってるね、今日も可愛い)
良かった…
「あ…してくれてんだな」
ネックレスはどうしても外せない気がしたから…
「お兄ちゃん、今日はケーキが食べたいな」
伸二…嬉しそう。
この笑顔…好きだな…
いつもと変わらないはずなのに、シチュエーションのせいだろう、アタシだけが独占できるような気がした。
お店でアタシがケーキを食べるのを見ている伸二。恥ずかしくてコーヒーカップで顔を隠してしまった。
伸二に見詰められると情けないけど、今日はドキドキした。きれいな目…コーヒーカップを掴む指先…
アタシは彼とセックスがしたい。そんな細かい所にまで目が行って、恥ずかしいくらい体が反応するのがわかる。でも胸もキュンとして…そんな自分が汚ならしい気もしていた…