人は、余りにもびっくりするとその事実を全力で拒否するらしい。
良夜は止まった。
良夜の頭は真っ白だ。
トマトな顔色が一気に引いた。
…僕は彼を失礼だと思った。
後に引けないと思い、畳み掛けてみる。
「中3の時に付き合ったもんね」
良夜の目が、見開かれた
まさか、そんな。
そういう目だ。
…僕は彼を更に失礼だと思った。
だから、更に更に畳み掛けてみる。
「いくとこまでいったもん…夏休みに」
リアルジョーク。
初体験は夏休み。
知識だけある僕の憧れな響き。
ウケル〜みたいなノリを期待したら、真に受けた良夜の思いもよらぬ真剣な眼差しが跳ね返ってきて…ようやく僕は
マズイ。
と思った。
これは何だかやりすぎた予感だ。
良夜はコタツから出て、PSPを置いた。
なんだなんだ。
出ていくのか?と思いきや、僕の隣にきて正座したではないか。
「…本当に?…奏太、本当に本当?」
真剣だ。
どうしよう。
うっそだよ〜ん、とか言える雰囲気0。
顔文字で言うなら
(((゜□゜;)ハワワ
「…本当」
言っちゃった。
僕のくだらないプライドが言わせたんだ。
すると良夜は、信じられない言葉を口にした。
「…じ、じゃあさ…お、教えてくれない?」
「…?」
良夜はまた、トマトと化した。
「き、キスの…仕方」
…へ。
そして僕はまた、時代劇の下働きと化した。
「…へえ」
…。
………。
僕らの間に、かなりオカシイ空気が流れている。
まあチャラ男から言わせると僕らオタクはいつでもオカシイらしいけど。
…と、前に使ったフレーズが繰り返しでるくらい僕は動揺していた。
くだらない嘘は、身を滅ぼす…。
僕は、0コーラをゴクリとやって、決心した。
男にとってプライドは命より大事という。
なら、この嘘を真実の高みへと持っていこうじゃないか…。
僕は、頷いた。
「よかろう」
と…。