「此処は…」
俺の目の前に今まで居た場所とは確実に違う風景が見えた。周りを見回すと俺が立っていた場所は何処か中世の世界にいるかの様な城の様な建物の中だった。
そしてただ呆然と立ち尽くしている俺の周りには、何かの模様の様な文字の様な物が円の中に書き込まれていた。
「一体何が起きたんだ?」
「よくぞお出で下さいました、異世界の勇者様」
後ろから声が聞こえふと振り返ると、そこには純白のドレスに身を包み頭にきらびやかな宝石の装飾されたティアラを着けた美しい女性と武装した衛兵の様な女が二人居た。
「異世界の勇者?なぁ、何言ってるんだ?」
俺は、ますます訳がわからなくなった。
「貴方はこの世界を救うため、今この時代、この時に平行して存在する幾千の異世界、つまりパラレルワールドの中より、この魔方陣が選んだ唯一魔王を倒す事が出来る勇者なのです」
「あの、もしもし?魔方陣が選んだだか何だか知らないけど俺が勇者に見える?」
俺は自分で言うのも可笑しいが、はっきり言って体格は余り良くなかった。
まして喧嘩もあまり強くなく間違ってもゲームやアニメに出てくるような魔王や魔物退治など出来るはずがなかった。
「確かに勇者と言うには少し違いますね」
「おい…、はっきり言い過ぎじゃないか…」
「しかし貴方が魔方陣に選ばれたのには必ず理由があるのです」
俺の頭はすっかり混乱していた、だが突然今まで暮らして来た世界から別な世界に飛ばされた上に喧嘩も余り強くない俺が勇者に選ばれたのだから当然と言えば当然だ。
「もし…貴方様がこの世界の危機を救ってくれる事に協力して頂けるなら私達もそれ相応の見返りを差し上げましょう。魔王を倒した後に、この世界で裕福な暮らしを望むのなら貴方に膨大な財力を与えましょう」
「…っ!?だがそれは魔王を倒してからだろ、もし半ばで死んじまったらそれで終わりだろ」
危うく俺は言葉の罠にハマる所だった。上手い話には必ず裏側がある、そう心に決めている俺はその言葉を受け入れる事は無かった。