歩き出して数分後…。
「此処が出口です」
衛兵により重い扉が開けられると、そこは緑の山々、城下に広がる街、そして遠くには海が広がり水が煌めく美しい景色が広がっていた。
「美しい景色だな、俺が居た世界とはまるで違う…」
暫く俺は立ち尽くしその美しい景観を目に焼き付けていた。
「勇者様の居た世界はどんな感じの場所だったんですか?」
ぼーっとなっていた俺にイヴが話し掛けてきた。
「此処とは正反対な場所だよ、山より高い建物が沢山在ってそこで沢山の人が暮らしたり仕事したり、空だってこんなに蒼くない、いつも工場から出る煙やガスで空が覆われて灰色がかってる、勿論自然が豊かな場所もあるけど俺が居た場所はそんな所だ」
何故か俺はこの景色を失いたくなかった、今までこんな景色を見た事が無かった俺はその時に初めてこの世界を護りたいと邪念の無い心で思った。
「どうなさいました勇者様?」
言葉を無くしていた俺を心配してリリスが俺の顔を覗きこんだ。
「何でもないよリリス、さぁ行こうか」
城は丘の上に建ち街を見下ろせる様になっていた、俺達は丘を下り街へと下りて行った。
「随分賑やかな場所だな」
街に入ると其所は商人や町民がざわめく活気ある場所だった。
「次に向かう湊町には今から出ても夜にしか着きませんからここで少し食料を調達しますね。」
「夜か…、かなり遠いんだな」
食料調達している四人の後に着いていると何処からか突然声が聞こえてきた。
「こっ…ちへ…こい…」
「何だぁ?」
周りを見渡すが俺を呼んでいる者は居なかった。
そして俺にしかその声は聞こえていないようだ。
治まる事なく俺だけに聞こえる声の方へ行ってみる事にした。
「なぁ、ちょっと探索して来ていいか?」
「えっ?あっ、はいそれでは街の中心に広場がありますから其所で待ち合わせましょう」
「迷うと大変ですから一応、私が着いていると行きますね」
イヴが同行し俺は声の聞こえる方へ進んだ。
「あの…勇者様、さっきから何を探しているんですか?」
「んっ?あぁ、何かさっきからこっちに来いって声が聞こえるんだよ」
その言葉を聞いたイヴは表情が険しくなった。
「まさか魔族…。」
その声は段々と近づいていた。