その帰りの車中では、助手席に律子が、後部座席に倉真が座っていた。
「新島さんも、今日は遠くからわざわざありがとうね。」
運転しながら何気なく美月が話しかけた。
「いえ。距離が遠いのはいつもと変わりませんから。」
「そ、それもそうだよね。何言ってるんだろ、私。」
律子はルームミラー越しに倉真に話しかけた。
「百合原くんはどこに住んでいるの?」
「え?あっ…あの、ほら。」
律子の質問は鋭かった。
律子の住んでいる町は学校のある町からは3つほど離れており、これ以上離れている町に住んでいる人間は珍しい。
倉真は学校のとなり町に住んでおり、無論とっくに通り過ぎていた。
「わ、私の家の近くなの。それでまず新島さんを送ってから…。」
「…。」
律子は二人に鋭い眼差しを向け続けていた。