「あの、車内暑くありません?上着脱いでいいかしら?…へえ〜、福岡にも男優さんいるんだ!」
抜いたジャケットを畳みながら女は言った。
私は冷蔵庫から 750ccの缶ビールを取り出し新しいグラスに注ぎ、女に差し出して飲みかけのグラスを後部席の流しに置いた
これで、効いて来る筈だ
「居ますよ福岡にも男優は…ここから全国に散ります。でもAV撮影なんかになると急にはダメですけどねスケジュールの都合があって…私も男優の端くれですけど、現にこうして仕事ですし…」
「あなた男優なの?」
「ええ、東京に協会があるんですが大変なんです。
健康診断なんか大変ですよ。月二回、性病検査の診断書送付するんです。
昨日、私は送りましたがね…」
「健康だった訳ね!協会が面倒みてくれるのね」
グラスに口をつけながら女が言った。
「とんでもない!がめついだけです協会なんて。最初、一週間の実技指導、入会金、月会費…取られるばかりですよ。」
「実技指導もうける訳?先生は…女性?もちろん」
「もちろん女性です。個人指導で…で、一通りやらされて、先生が各自の特性を決めるんです。それが男優名鑑のキャッチフレーズになる訳です。」
「で、あなたの特性は?」
「それを?奥様に今、言うんですか?」
「って言うか、早い話しそうね、お聞きしたい、かな…」
女はビールの精ばかりではなく、顔を赤らめた。
「ああ、まだランプ、点滅しないか……なら、いいますけど、…私の特技は、『舌技と指技と硬度』の三つです」
「ぜつぎとしぎとコード?…全然、判らない。何、それ…」
「舌技、つまり舐めること指技、つまり指の使い方テクニックです。女性の体を舐める。指でイカせるテクニックのことです」
「せ、先生を…その…そのテクニックで……。 コードは…」
「硬度、つまり硬さです」
「硬さ?舌と指が硬い?という訳ね」
「違いますよ、奥様。その…つまり、すばり言いますと、チンチンが勃起した時…硬いと言う意味です」
「す、凄い!お口と指と…あの……硬いってこと」
「凄いかどうかは判りませんが、その先生の感想がそうでしたから…」
女はグラスを一気にあけた…
「あの、私、酔いに任せて恥ずかしいこと、お聞きするけど、見せて頂けない?」
「構いませんけど、…オチンチン、撮影現場ではチンポといいますが、手で触って硬いかどうか、判るもんじゃないですよ。実際に入れて見ないと…」