10分後、商品を並べ終えてカウンターに戻ると先輩は電話中だった。
『…じゃないでしょうが!いいか?!…』
!
横目で俺に気付くと慌てて電話を切った。
『終わりました。…あの、電話…切らなくても』
『あ、いーのいーの!それより早かったじゃん?!
いつもより並べやすかったんじゃない?』なんて。
確かに…いつもなら棚をいったり来たりしていたっけ。今日はそんなことなかった。
『でしょ?昨日、弘希…いや、店長が君が並べやすいようにって箱の中・いじってたから♪』
・・・・。自分で出せよ!
佐倉君のこと、気に入ってるんじゃないかな?なんて笑う先輩の言葉は完全に無視して事務所に向かう俺。
『…帰ります?』
『あ、待て!』
なんだ?
『明日休みだろ?ゆっくり休めな♪』
なにも知らない先輩は無邪気だ。
『…お先失礼します』
それだけ言うとすぐに着替えて店をあとにした。
ゆっくりなんて出来る訳がない。アイツの言う“来る”は、明日なのだから。