「高橋くん、ダメよ!おばさんを冷やかしちゃ…高橋くんこそ、お若くて素敵よ、おモテになるでしょ、若い娘に…」
先を歩く女の後ろ姿も官能的だった。
スカートのシワを気にするようにさりげなく尻に触りながら女は言った。
「私ですか?…私、若い娘には興味が沸かないんです、人妻さんと言うか年上の女性に魅力を感じます。」
「まッ、高橋くんったら、人妻さんだなんて…あっ、電話そこです。どうぞ。私、お茶でも入れますね、ゆっくりして」
私は形だけ確認すりふりをして、電話を切った。
「じゃ、私、これで…」
「ダメです。主人に叱られます。それに、タクシー、呼びますから…」
女は手早くコーヒーを私の前のテーブルに並べた
私はまた、メラメラと悪戯心が頭をもたげる!
「専務には可愛がって頂いてます!飲み会にはご自分は飲めないからと言われて、金一封をいつも頂きます、グループに。酒屋さんのご用聞きって…ご自宅では晩酌なさるんですね?それとも、奥様が?」
私はコーヒーをすすりながらまた、さりげなく聞いた。
「そうね、どちらかと言えば私が、お酒好きかな…
それより、高橋くん、おいくつ?」
「私ですか?28です」
「まあ!28 ?…それで彼女はいらっしゃらない」
「ですから…興味なくて。失礼な言い方ですが、奥様くらいの年代じゃないと興味はないです」
「どうかしら、今度の日曜日、主人のお使いをして頂いたお礼に、ランチでもご馳走させて頂けない?美味しいものでも」
「とんでもありません、専務に叱られますそんな」
「高橋くん、私、32才。おばさんに恥をかかせないで!美味しいもの。何でも構わないわ…ねッ?」
「えー、何でも、ですか」
「何でもよ。お礼だから。郊外に行って見る?美味しい店、いっぱいあるから…私の車で」
「本当に、いいんですか?奥様の運転で?ランチですね、昼間…」
「携帯番号を教えて下さる?業務用あるでしょ?」
「ええ、今日は、会社に置いて来ましたが…」
私は11桁の番号を教えた
「じゃ今日は私、これで、失礼します」
「タクシー、呼ぶわね」
専務夫人はタクシーに電話を掛けてくれた。
そして、週末の金曜日、携帯に電話があった。
公衆電話からだった。
「あッ、高橋くん、〇〇です!約束のランチ、明日の土曜日ではダメ?」
「いえ、私は明日でも構いません。どちらでも…」
私は理由は聞かずに電話に答えたのだった。