すっかり日も暮れた頃、食事も終えた二人は、これから学校内では極力お互い意識しないように頑張ろうと冗談半分で話していた。
「先生の歴史の時間が大変だよ。」
「嘘ばっかり。……みんなして寝てるじゃん。」
美月は少し暗い表情になり、自分の授業に自信がなくなってきていると明かした。
「可愛い。そんなこと思ってたんだ。」
「真剣な悩みなんだけど。」
「深く考えないで。テスト前になればみんな必死で勉強し始めるし、本気で先生の授業が嫌いなワケじゃないよ。」
「なんでみんな寝ちゃうんだろ。」
「1時間目と最後の6時間目だから。みんな疲れてるときに重なるんだよ。」
「………。」
美月が子供のような顔で落ち込むのを、倉真は初めて見た。
「美月はちゃんと先生やってる。大丈夫だよ。」
「そうかな。」
倉真が頷くと、美月は笑った。
「あの娘はいっつも聞いてくれるな〜。ほら、今日一緒だった新島さん。」