――――新島家
「ぁああん!!最高よぉ!ああ…あう!」
「うあああイクぞっ!!!!」
律子が帰宅したのにも気付かず、律子の義父とその不倫相手が情事に溺れる声が、絶え間なく勉強中の律子の耳に響いていた。
律子は知っていた。
金曜日だけは義父の帰りが早く、その際、女性を連れ込んでいることを。
律子は図書室で時間を潰して帰ればこれを回避出来た。
律子は中学生からこの生活が続いていたのだった。
今日の雪を誰よりも彼女は呪っていた。
かと言ってこの吹雪の中、行く宛もない。
そしてこの声に自らの体が反応して、下着がグショグショに濡れていることを彼女自身、とてつもなく恥じていた。
それに加えさらに、今日は危うかった。まさかあの百合原倉真が自分の家の前まで来るとは予想だにしていなかったからだ。
喘ぎ声のひとつでも聴かれたら何と言い訳すればいいのか。
そして帰り際に堪えきれず泣いてしまった。
律子は抑えきれなかった。
心の中で助けを求めてしまっていた。
一番大好きな人に。
百合原倉真に。
涙を零しながら、律子は下唇を噛んだ。
(百合原くん…。助けて…。)