真っ赤になる亜希。それを見て、長谷川がしれっとした顔で言う。
「ん?冗談だよ?」
「なっ…」
「えっと、どこから聞いてなかった?」
「え…、え?…エンジンかけた後から…」
「全然聞いてない…(苦笑)えっと次は、ハンドブレーキを下ろす」
ハンドブレーキを下ろす。
「んで、ギアをDに合わせる」
ドライブに入れる。
「じゃあ外周走るから。全く、お前のせいでかなり出遅れた」
「す…すみません」
ある程度の説明を受け、次は亜希が運転をする。
「じゃあ、出発」
「はい」
やはり、初めてということもあり、運転はうまくない。
「きゃっ!」
ブレーキを強く踏みすぎて、車体がガクンとなる。
「ブレーキ踏みすぎ」
「(言われなくても今の状況でわかるっつーの!)」
「聞いてる?」
「え?…はいっ!聞いてます」
キリッとした目つきて答える亜希。フッと笑う長谷川。何周も走り、終わりの時間が近付いてきた。
「ハンドル貸して」
「え?…は、はい(何だ突然?)」
ハンドルから手を離す亜希。助手席からハンドルを使い、駐車する長谷川。その光景を始めて見た亜希は驚いた。
「カッコイイ…」
ボソッと声が出てしまい、思わず両手で口を塞ぐ亜希。
「ん?何か言ったか?」
「え?いいえぇ?」
明らかに動揺を隠しきれていない。
「そ?」
ハンコを押し、アドバイスを伝えられ、記念すべき初の技能は終了した。