『遅かったな。どこへ行くつもりだったんだ?』
湯気のたつカップで手を温めながら周藤は笑っている。
『別に。』
マフラーを外しながら向かいに座る。店内は暖房がきいていた。
離れるなよ?とか言ってたくせに。…先を急ぐ俺を呼び止めない、あなたの性格を疑います。
『お待たせいたしました。ホットミルクです』
カップとハチミツのポットが置かれた。 ここではカフェオレにもハチミツなんだぜ! と、周藤はなんだか自慢げだ。
ゴクリ。
一口飲むと 冷えきった体に温かいのが染み渡る。意外に旨い。
『これからどうするんですか?』
カップで手をすりすりしながら聞いてみた。
『お前はここでお留守番だ!』
言うなり伝票を取ると会計を済ませようとする。
『えっ?!』
別に周藤と一緒にいたかった訳じゃない。ただこんなとこに一人で置いていかれても困る!
『俺は厄よけに来たのよ?30分、いや40分くらいで戻るから』
待ってられるな?
聞かれて頷く。いい子だ…ってクシャッと頭を撫でて、店を出る周藤。
俺は―、
何もいえなくて―。
…ごちそうさまでした
そう小さく呟いた。