「木村君、ここはひとつ…理解して貰えないだろうか…会社を救うと思って何とか」
人事部長の明石が言った
私が勤める日本橋の本社ビル 13Fの会議室。
リストラ対象の社員に対する退職勧告の面談である。社員の三分の一をリストラするというのが会社の方針だった。
私は 33才独身である。
リストラ対象者の一人として、もう腹は決めていた。会社に対する愛社忠誠心などは吹き飛んでいた。
(家族も居ない。再就職するにもギリギリ間に合う年齢だし、キャリアもある。会社を辞めても失うものはない。大学時代の友人から誘われてもいる…が、すんなり退職願いを書くのもしゃくにさわる)辞める条件は幾つか腹にあった。
「私が辞めることが会社を救うことになるんですか?会社を辞めた私は誰が救ってくれるんですか?部長。酷い言い方ですね…私が何かミスやエラーをしたのならともかく」
「いやあ、そう言われると一言もないんだが…君はまだ若いし、再就職がかのうな年齢だ。独身でもあり小回りも利く。退職金も特別割り増しをするつもりだ。何とか理解をして貰いたい」
「部長、お話の趣旨は良く判りました。返事は二週間待って下さい。考えてお返事します」
その日はそれで話を終えた。実は退職勧告は係長の井上、課長の本橋からも肩叩きされ、それを拒否して今日、部長の明石がお出ましになったのだった…
退職に関して直接話をされただけに、井上、本橋、明石の三人は印象に残っていた。(奴らは人間じゃない!リストラとは首斬りだ!人間は首を切られたら死ぬ!奴らは人殺しだ)許せない三人だ。
私はその日から業務は手を抜いて、三人の調査活動を始めた…。
人事課、庶務課に出向いて三人の個人情報を集めた。住所、家族構成と名前、電話番号…履歴書のコピー、家族現況調査標のコピーを手に入れた。
彼ら三人が私を社会的に殺すと言うなら私も三人に死に値する刑を与えることを考えたのだった。
三人の家族現況調査標を見ながらある方法を思いついた!(直接、三人に刑を与えるのではなく、妻達に刑に服して貰おう)
合法的とは言わないが、違法にならない方法で三人の妻を通じて三人に仕返しする方法を模索した
…取り敢えず、三人の妻達の情報を集めることにして、顔写真を撮ることにした。
宅配便の運転手、新聞の勧誘員を装い、一週間をかけて三人の写真を撮った。