予想外の言葉に、ボーゼンとし、亜希を見る長谷川。真っ赤になり慌てる亜希。
「な…なーんちって…ハハ(笑)だ…騙されてやんの…」
必死に堪えたのに、目に涙があふれ、無情にも涙は頬を伝う。
「…じょ…だんだから…冗談だから、気にしな…で…」
息を乱して泣く亜希。
「…わかった」
「…ごめ…なさい…」
泣いている亜希の頭に手をポンと置く長谷川。そしてハンドルを操作して、路上に停車する。
「前…見えねーだろ」
「はい…ぼやけてます…」
「運転出来る状態になったら言って」
「はい、すみません…」
「…いいえ」
少し泣いた後、涙をぬぐい、ハンドルに手をかける亜希。
「もう、大丈夫です」
「ん。じゃあもう時間も無いから学校戻ろう」
「はい」
車は、車学内へと戻った。
原簿と手帳にハンコを押し、自分の足下を見る長谷川。
「悪かったな」
「え?」
長谷川の方をみる亜希。
「泣かせちゃって」
「え?そんなの、私が勝手に泣いただけ…」
亜希もうつむき、自分の足下を見る。長谷川が、顔を上げないまま話し始める。
「…俺もお前の事、好きになっちまった。でも俺には妻がいる。だからお前の気持ちには答えられない。ごめんな」
「え…?」
『好き』という言葉を聞き、耳を疑い、長谷川の方を見る亜希。長谷川は亜希を見つめ、
「これからも、『教師と生徒』として、仲良くしような」