「残り 3個は私が持ってスーパーに行きます
…キチンと店に戻します
店長は居ると思います」
「はい。申し訳ありません。お詫びを言います私」
「霞さん、先に歩いて、店の前で止まって下さい」
さすがに霞は今日は短めのスカートを穿き、しおらしい服装をしている。
チラチラと見えるふくらはぎの辺りが白い。
育ちの良さを窺わせる。
私は入り口横の灰皿の前に霞を目で誘い、タバコに火を点けた。
一口、大きく吸って、空に向かって吐き出した。
「霞さん、中に入ったら、私と仲のいい振りをして下さい。夫婦でも不倫カップルでもいいですからね。私と一緒に、昨日の品物のあった場所まで行きます…私が店員や防犯カメラで霞さんを隠しますからその隙に、その3個を棚に戻して下さい。完了したらまた3個渡します…戻すのは正確な場所でなくても構いませんよ。モタモタしないことです。いいですね」
「えッ…そんな!…もし…見つかったら私…」
「見つかった時?その時は持ってる商品をレジに行って支払いを済ませるんです。店内では万引きは成立しないんです」
「そ、そう…ですね…」
私達は店内で寄り添った
次々に商品ケースに戻して店を出た。
「コンビニまで戻ります」
霞はまた、先に歩いた。
私はコンビニの灰皿の前でポケットから霞が作成した万引き証明書を霞に見せた。
「後は、これが万引きを証明します。これ、昨日のコピーに間違いないですね、霞さんの自筆ですね?」
「はい。間違いないです」
霞は簡単に目を通し、私に差し戻してくる…
私は受け取ると丁寧に畳んだ。霞はそれを見つめていた。
私は霞の見ている前でそのコピーを二回程、ねじて、ライターで火を点けた。灰皿の上でやがて灰になった…
霞は意味が判らない と言う顔で私をみつめている
「これで、明石 霞さんの
『昨日』は空白の一日になりました。お祝いにそこのスタバでコーヒーでお祝いをしましょう」
私は昨日の珈琲ショップに向かってスタスタと歩いた
私はコーヒーとフライドポテトの乗ったお盆を持ち、駅前がみえる二人掛けのテーブルに着いた。
時計を見ると棚橋との待ち合わせ時間まで 40分もあったし、ここから背の高い棚橋の姿も見えるだろう…。
「霞さん、もういいんですよ!霞は善良な市民です。バージンです。笑って下さい。」
私はコーヒーを啜りながら霞に言った。
2、30秒経った頃、霞の両頬を涙が流れた。