「霞さん、笑って下さい。それこそ、別れ話しをしている不倫カップルですよ!…他から見たら」
霞は拭こうともせず、涙を流し続ける…
私はポケットからハンケチを取り出し霞に差し出した。霞はやっと気がついたように頭を下げて受け取ると、それで涙を拭いた。
「さて、子供さんですね。いつも行く公園を教えて下さい。に友人とここで待ち合わせて二人で公園で子供さんに会います。
これに簡単な地図を書いて下さい。…それと、その前に友人と食事したいんですが…ビフテキの美味しいレストランも」
私はテーブルティッシュとボールペンを霞に差し出した。
霞は声を震わせながら言葉で説明し、公園までの略図を書いた。
その、ちょっと書く目印やレストランの名前も達筆だった…。
「ああ、ここがレストランですね。公園には 1時頃行って見ますよ。居ますかね、その頃…」
「はい、居ると思います。いつも、ご飯を食べたら行きますから…」
「じゃあ、お母さんは家でさりげなく、待ってて下さい。霞さんは公園での事は知らない事にして、子供さんが話すまで、知らん顔してて下さい。
霞さんからそのことを問い正したりしたら私の努力は水の泡です。登校拒否が治るものなら必ず子供さんの方から話しがある筈です。今日か、明日か明後日か…待ち続けて下さい!旦那さんにも内緒ですよ」
「はい、何も知らないことでいいのですね、そうします。京平さんって、本当は何をなさっていらっしゃる方ですか?私、スーパーから、子供のことまで…頭か混乱して…」
「私の仕事は警備員ですよ、ただ、大学までサッカーをやっていましたから子供さんと話しは合うと思います。それに独身男ですからね。いつもこんな固い話しばかりはしないんですよ、どちらかと言えばスケベ男です」
「京平さんもサッカーを?大学まで?そうなんですか、それで!…独身でいらっしゃるんですね…それに、そんな冗談を…」
「冗談ではないですよ。さっきもスーパーでは不倫カップルの気分で素敵な時間でしたよ。あのドキドキ感が…霞さんとラブホテルに入るようで。…あッ…それと霞さん、差し出がましいのですが…子供さん以外でもストレスが溜まるとか…出来ればストレス、溜めないで下さいよ」
「はい。ご親切に、どうもありがとうございます。女のストレスなんて…ひと様にお話出来るようなことでは…。あの、ここの支払いは…」
支払いを心配しながら霞は帰って行った。