遂に完成した。世紀の大発明品が―
「間に合った・・・、クックック、間に合ったぞ!」嗄れた声が地下研究所に響いた。
研究所と言っても四人しかいない― 声のヌシである白髪の神経質そうな老博士と、その隣に付き添うアラフォー世代の美人助手。それから白衣に黒いサングラス姿のチビとノッポの怪しげな二人。 「実験台の準備はよいか」「へいっ!」 老博士の問いに、チビだが身体のガッカリした男がそう答えた。
「美人じゃが性格が悪い若い娘と、ワシと同じ歳位の爺さんじゃぞ」
「へいっ、抜かりはありません」 チビの男は、視線をカプセル型の寝台に横たわった二人に移した。二人は麻酔で眠らされている。老博士がカプセルに近づき覗き込む。 「かなりの美人じゃな、歳は幾つくらいじゃ?」 「運転免許証から19歳との事です」 老博士が哀れむ様な視線を少女に送った。 「性格が悪かったばかりにある日突然じいさんに変身してしまうのじゃから、哀れよのう」 美人助手が密かにため息をついた。また博士の偽善者ぶりが始まった、と思いながら。
「この爺さん、なんかワシよりだいぶ歳いってないか? どう見ても80をかるく越えている様に見えるんじゃが」 「73歳です。年金手帳で確かめやした」 チビの男は言ったが、実は橋の下に住んでいた浮浪者を歳など確かめずに拉致してきただけであった。
「幸せな爺さんよのう。目が覚めたらピチピチの娘に生まれ変わっているのじゃから。これだけ可愛かったらエッチな事もヤリ放題じゃ、ケッケッケ」
と、変な笑い声の老博士。ふいに真顔になった。 「実験が成功すればの話じゃがな・・・ いや、IQ300のワシが物心ついた時から研究してきた成果じゃ、成功しない筈がない!!」 力んむ老博士。その空気をノッポの男のボソッとした一言が鎮めた。 「永遠の命だ・・・」 老博士は息をひとつ吸い込んだ。
「そう・・・ この革命的な発明により、ワシら四人は若い身体を貰い続け永遠に生きられるのじゃ! よしっ、パスワード入力!」稲妻が走り、老人と娘を乗せたカプセルがクルクルと動き出した。