老博士は、助手の冴子に媚薬を使わせる腹積もりだった。己の子を冴子に産ませる、それが老博士の目的だったのだ。
富継と美少女の実験体を使って世紀の大発明がいま成熟しようとしている。次の変身は自分の番だと、老博士は決めていた。
その前に老博士にはやらなければならない事があった。IQ300オーバーの優秀な自分の遺伝子を、この世に残す――― それはひとつの使命感として老博士の中に存在していた。
だが、パートナーが誰でも良いという訳ではなかった。IQが200近くもあり美しく健康体の冴子だからこそ、母体としての資格があるのだ。
「ワシの発明とはいえ、ただの媚薬なんじゃ。そんなに自信がないんかのう、冴ちゃんは?」
老博士が誘う。
「だから自信がないとかの問題ではなくて、媚薬を私が使用する意味を感じないと言っているのです」
苛立つ冴子。
「だったらじゃ、この老いぼれの一生のお願いじゃと思って試してみてくれんかのう」
「…博士のお頼みでも今回はお断りします」
「この通りじゃ、ワシは発明が全てなんじゃ。どんな発明品でも可愛くて可愛くて仕方がなくてな、だから試してみたいんじゃ、本当に効果があるのかどうかをのう」、老博士は手を合わせて懇願の素振りを見せる。
「試してるじゃないですか、今」、冴子はモニターに視線を移した。
「あのスケベ爺では駄目じゃ駄目じゃ。媚薬を使っても使わなくても、恐らく淫乱になりよるじゃろうて。冴ちゃんみたいな人格的に優れた人間でないと本当の効果が分からんよ」
「…」、冴子は発明とか研究の為、という理由に弱かった。
「冴ちゃんが使ってみて効果を感じなんだらそれはそれで仕方がない、失敗という事じゃ。発明には失敗は付き物なんじゃから次につながる。冴ちゃんに実験台になって貰うのはほんと申し訳ないがの、どうしても実験の結果・データを出したいんじゃ。冴ちゃんだったらそれを正確に分析できるのじゃからの」
老博士の言葉は熱かった。冴子は軽く溜め息をついた。
「 …わかりました… 」
小さく答える、冴子。
「えっ? なんじゃて、よく聞こえんかったが? 」、嘯く老博士。
「実験にご協力させて頂きます。結果が出なかったら申し訳ありませんが… 」
「ええよ、ええよ」、老博士はニヤリと怪しく笑った。