俺は今、某大学の二年生で野球部に所属している。…もうすぐ春のリーグ戦が始まる、キャンプの真っ最中だ。
練習は厳しい。
練習を終えて寮に帰り着くとグッタリとなる。
それでも夕食が唯一の楽しみだ。
夕食はグループ毎に摂る
四年生には一年生の「付き人」が付く。年によって一年生の入部者が多い年は複数の付き人が付く。
俺はやっと付き人任務から今年、解放された。
二年生になると「付き人教育係」となり、少し楽になる。付き人の一番きつい仕事は洗濯だ。
付き人は四、三、二年生と自分らのグループ全員の洗濯を賄う。…練習で泥と汗にまみれた練習着だけでなく先輩達の普段の洗濯物も全部だ。
雨天が続くと明日の練習に備え、コインランドリーで乾燥だけ、済ます。
料金はもちろん、付き人が個人持ちだ。
俺の今のグループの構成は、四年生の通称、淵さん、三年生のヨッさんと一年生の付き人研太と俺、の四人だ。
俺は、苗字をもじってモンタと呼ばれている。
「おい、モンタ。久しぶりに風俗行くか?淵さんが行くなら奢るってよ」
食事の時、三年生のヨッさんが俺に言った。
淵さんは秋のドラフトでは間違いなく指名されると言われていて、金回りがいい。
「えー!いいスけど、研太もですか?」
「うん、淵さんは彼女と行くって。だから俺達三人で行って来いって。淵さんが…」
付き人の研太には拒否権はない。「いいスねー」
と俺は言った。
「じゃ、飯食って、9時な?…玄関集合だ。いいな、研太、洗濯終われよ」
とヨッさんが言う。
「淵さん、ゴチになります!いつもスンマせん」
と俺が言うと淵さんは人差し指を口に当てた。
9時に玄関で三人が落ち合い、適当に歩いてタクシーを拾った。
「淵さん、スゴイすッね!…うらやましいス」
「そうよな!。どっかのアナウンサーじゃねえか?
いいわな…」
そんな話をしながらヨッさんは俺に四万円をこっそりくれた。半分を研太に渡した。
…風俗か…俺はタクシーの背もたれに頭を預けて目を閉じた。
思い出す。
俺は当時、童貞ではなかったが、セックスらしいセックスを姉とした。
正しく言うと義理の姉だ
俺が高校三年生になったばかり。春だった……。