夕陽が残りわずかまで落ち込んだ頃、
体育館の教官室で三春は呼吸を落ち着けていた。
(新島律子はもう使い物にはならないかしら…フフ。良いザマだわ。倉真くんにまとわりつくからよ。)
立ち上がり、様子を見に行こうと扉を開けると、同時に氷牟田が体育館に入ってきた。
「氷牟田くんじゃない。どうしたの?」
「ヘタな芝居はいい。事情は全部聞いてる。」
三春は目つきを変え、氷牟田に迫った。
「どうしたいの?私を。」
「今すぐこの馬鹿な事を全部止めるんだ。」
「なんの立場から言ってるの?」
「俺は事情は全部聞いた。全部だ。」
「?」
氷牟田は美月が話した君人との出会いから三春に語り始めた。
彼は、一連の話の中である大きな矛盾点がある事に気付いていた。
「そ、それが何だって言うの!?だから優しくし過ぎて、君人はあの女に…。」
「やっぱりな。肝心な部分は知らないみたいだな。」
「な、なにを…!?」
そして彼は雨の夜に、一人の女教師と一人の男子小学生が愛し合った事実を伝えた。
三春は無意識に涙を零して、膝から崩れ落ちた。
「たった何時間だが、あの二人は男と女の関係になっていたんだ。それが分かっていればお前はこんな回りくどいこともせず先生を正当に訴える事が出来たかもしれなかったな。」
「そ‥‥‥んな‥‥。じゃあ、じゃあ、あの時から私はあの女に騙されてたの?」
「そうだ。お前は無意味に罪を犯した事になる。」
「今さら私自身どうなろうと知ったことじゃない!!!もう許さない‥‥。小学生の君人をよくも!」
「俺も協力しようか?」
「騙されないわ。あなたの様子からして倉真くんの味方みたいだし。」
氷牟田を無視して行こうとすると、
三春は腕を捕まれ、次の瞬間床に倒された。
「じゃあ俺に協力してもらおう。」