甲が夕べ、部屋に来たのは12時半を過ぎていた
正確には今朝だ。
眠っておこう。
彼が来たら朝までエッチモードで甘えねばならない。
部屋の明かりを消して…準備に手落ちはないか思いを巡らせた…
この来訪者は気遣いしないで良かった。
つまり、私は起きて待つ必要はなく、私は眠っていれば良かった。……だから、いつしか眠りに落ちた………。
そして、かすかに遠く勝手口のドアを開けるような気配に目を覚ました。
枕元の目覚まし時計を見ると11時を指していた
また布団に包まり眠った振りをして彼を待った。
私は昨日より早く来てくれたことにワクワク、ゾクゾクしていた。
…いきなり、縛られるのだろうか…
そして、部屋の戸が開いて入ってきた…。
第一声は決めていた。
(今夜は早かったのね)だ
『失礼します』
彼が言った。
私は布団を口までかぶり、黙っていた。
『失礼します!』
こ、声が違う!
甲ではない!
瞬時に違うと判った。
『どなた?甲さん?』
少し身を固くして尋ねた
『いえ、今夜が初めての訪問です。甲かと聞かれたところをみると、私は乙ですね多分』
『ああ、乙さん!…昭さんからお聞きしています…お近くへどうぞ…』
『奥さんへ初めての夜ばいで少し緊張してます。失礼します。私の顔、判りますか?…判ってはイケないルールですので…』
近づいた乙が言った。
『いいえ。ここからは判りません。…暗くて…輪郭だけしか……』
『ちょっと失礼しますよ、マスクを持って来ましたから着けます』
背中にリュックを背負っているようだ。
肩から下ろしゴソゴソと動く輪郭だけは判った。
『取り敢えずは、昭さんにご挨拶をさせて頂きます』
仏壇の前に乙は進んだ。
蝋燭を点け、線香を立てる…仏壇に脚を向けて寝ている私からは後ろ姿しか見えない。
合掌して立ち上がる乙に
『どうぞ、蝋燭は二本、つけて下さい』
私が言ってしばらくの後
部屋が明るくなり、蝋燭の明かりで乙の横顔が浮かび上がる…ゾクリとした。西洋の怪盗ルパン?快傑ゾロか、あんなマスクを着けてセクシーだ
『マスク、よくお似合いですね…』
『奥さんに言われると照れますよ…』
乙は足元にリュックを置いてジャケットを脱いだ。
昨夜と同じように私は立ち上がりジャケットを受け取り、ハンガーに掛けた。
前に回りズボンを脱がせ、Tシャツも脱がせた。