『修さん。お話があるのお時間頂けないかしら』
私は、たまたま無人の食堂で顔を合わせた修にそれとなく言ってみた…修は40歳で入居者としては一番長い人だ。
『結構です。いつが宜しいですか?若女将さんのお願いなら、いつでも時間は作りますよ…今からでも結構ですよ』
心良い返事をくれた。
『…母が亡くなって、遺言だったお店もスタート出来た。…でもね、気になってる遺言があるの。…修さん、甘い卵焼きって知ってる?』
『えッ…ああ!…女将さん、そう言いましたか。亡くなる時に…そうですか…』
『…ええ。私には何のことか判らないの。修さんに、甘い卵焼きって聞けば教えてくれるから、と言っただけで…』
『女将さんが?…私に聞けと?…そうですか。…もう13年も前のことですよ。私がここに入居させて頂いてからですので。私…28歳でした…』
私はお茶を入れながら修の話に耳を傾けた…
修の話は 3、40分も続いた
『母が…そんなことを…父が亡くなって寂しかったのね。…修さん、母を軽蔑したでしょうね…』
『とんでもない!自分に正直に…素敵な生き方だと思います。今、考えれば…。でも…女将さんは亡くなる 10年程前には止められたんじゃないですか…』
修はお茶をすすりながら遠くを見る目で話してくれた…。
『…顔が赤くなる話ね。…でも…どんな、でした母は?…教えて下さい』
『甘い卵焼きを食べた朝は、それはもうワクワクドキドキですよ。綺麗な未亡人とセックスが出来る訳ですから。若女将は結婚の経験がお有りですから言いますが…』
私もお茶をすすりながら頷く…。
『その晩は女将さんの部屋には鍵が掛かっていません。時間は 22時に決められていました。かと言って女将さんは積極的に相手を引きずり込むと言うセックスではなかった。亡くなったご主人に気は使われて……。「眠っている間にセックスをされたら一番いい」とは言われていました。…足の方から布団に潜り込み、下着を脱がし前戯をし、濡れたところで挿入するまでは女将さんは眠った振りをしていました。…でもさすがに挿入されると女将さんも、ですね。セックスを積極的に楽しむという形。ですかね…翌日はあの凜とした割烹着姿で振る舞っておられました。私は尊敬していましたよ。未亡人が生きて行く姿って…そういうことかと…私、勝手に考えていました…」
私は修の話を聞きながら下着が濡れるのを覚えた