競馬場へ着いた。
富継のアパートから電車で30分もかからなかった。
サークルのメンバーとの待ち合わせ場所へ行った。正確な人数は分からなかったが、30人以上のメンバーが揃っていた。
富継が驚いたのは女の子の数だ。意外に多く、半数までとはいかないまでも10人以上はいた。
その中でも目立っているコがいた。
華奢でしなやかな四肢に浮かぶ艶かしく豊かなバスト。まずは、そのインパクトに富継の男心は釘付けになった。
マスクも良い。色白で小悪魔的なオーラを放つその表情は、今まで幾多の男達を魅了し虜にしてきた事だろうか…
「部長、遅いですよぉ?」
競馬サークルの部長である祐輔へ向かって叫んだのは、まさにその少女だった。
「文句だったら果茄っぺに言ってくれ。こいつ、今日が集合の日だって忘れてやがった? 」
「え〜っ、果茄先輩、ヒドぉ〜い?? 」
わざとらしく小悪魔的少女―― 【浦河美希】が言った。
身近で見ると、メチャクチャ可愛い。富継は美希のあまりの可愛らしさに、胸のトキメキを抑えきれなかった。
「ごめ〜ん、競馬で稼いだら何か奢るから許して?? 」
調子を合わせる、富継。
「果茄先輩、馬券は買わないと当たんないですよ〜?」
「ほんと競馬の予想すらした事ないのに、大きく出たねぇ、果茄? ?? 」
美希、エミイの連続攻撃に、(果茄って娘は、そんな感じなんだ… )と思う富継だった。
「行っけぇー? 差せ、差せ、差せ、差せ、差っせえ〜っ??? あ、あ、あ〜〜あ?? 」
叫んでいたのは富継だった。競馬サークルのメンバーは一同、唖然?
有り金の全てをつぎ込んだ9レース目。富継、敢えなく撃沈の瞬間だった。
馬券下手の富継は、5Rから9Rまで全敗の成績だった。そして興奮のあまり、つい本性をさらけ出してしまっていたのだ。
「ビギナーズラックのカケラもなかったな、果茄っぺ? 」
「どうしたのぅ、果茄? 今日、なんだか変だよ」
祐輔とエミイは競馬の事よりも果茄【富継】の事が気になっていた。明らかにいつもの果茄とは違うと感じていた。
(初心者じゃねえから、ビギナーズラックなんてあるかい? あ〜あ、また競馬でスッちまったい、生活費どうすんべえ? )
そんな富継に、缶ジュースが差し出された。
「先輩、どーぞ? 」