さぁ、自殺しよう。
お誂えむきに自室の柱にロープをくくりつけた僕は、太い縄を輪っか状にしたものを首にかけた。
ああ、思い出してみても最悪の人生だったな。
学校にいけばジャ○アンキャラに虐められ、自室に引きこもれば母さんに怒られ……つーか、何しとんじゃこらー、ってな感じに学校より数倍ひどい有様に逢わされる。
早くに父親を事故で亡くしたからか、母さんは人一倍僕の躾……というか全般的に厳しかった。
一度、僕が家出すると言った時なんか「それじゃあ、達者でくらせよ」と煙草を吹かしながら僕を見送った程の親だ。
ああ、不幸な星の名の元に産まれた僕。
神様、次、輪廻転生するときは金持ちで優しい友達と、息子に優しい母さんの元に僕を転生させて下さいな。
両の手を合掌させ、神に祈る様なポーズを取る僕。
「さよなら、現世……ようこそ来世」
半ば意味不明な台詞を口走った僕は、首にかけたロープに目を向けた。
いざとなると、やっぱ怖いモンだな。
やっぱやめとく?
いやいや、僕はもう現世にはこりごりなんだ。
よし、死ぬぞっ!
せー―………のっ!
「まだ死なないの?」
数瞬、僕は反射的に声が聞こえた方に体を向けた。
うん、それがいけなかった。
体ごと声が聞こえた右に向けた事により、台座から足を踏み外した僕の首に巻き付けたロープが地球の重力に従いおもいっきり締まった。
「へぶぅっ!」
かえるがトラックに敷かれた様な短い声が僕の口から漏れた。
「おお、完璧に締まってるね。大丈夫、大丈夫……もうすぐで魔界直行コースの列車が迎えに来てくれるから」
僕の右側でしゃがみ込んで、太腿にのせた右の片手で顎を支えながら楽しそうに笑い……苦しむ僕を見つめていたのは、見たこともない赤髪の少女だった。
少女は猫の様に丸い目と、小さな鼻、柔らかそうな唇を、整った輪郭の中に持ったいわゆる美少女だった。
――クラッ――
やばい、脳に酸素が。
あっ、ホントに死ぬ。
「ちょっ……これっ……縄……」
必死に首にかかったロープを指差しながら、かすれる声で僕は少女に助けを求めた。
「んっ……縄?」
少女は首を傾げながら僕に近づくと、せーのっで僕の下半身を下に引っ張った。
「ほげぇっ」