押し付けられた唇。
舌が僕の唇を開こうとした時、ようやく我に返った。
「っにすんだよっ!!」
突き飛ばされたアキヒトは面白そうに首を傾げた。
「キスだよ、キス。
お前のことだから誰ともしたことねえんだろ?
相手が女だろうが男だろうがやるこた同じ。
俺と寝てみる?
…悠…」
僕は唇を拭いた。
残る感触も全て拭った。
「お前、どうかしてる」
「そうだな、教えてやる。あの日俺が血ヘド出るまで殴られたのはな?
美恵子のせいじゃねえ…俺の歯が当たったからさ」
「何を…」
アキヒトは笑いだした。
「ウブだなあ…歯が当たったんだよ、あのやろうの汚ねえブツにな」
そんな。
衝撃に貫かれた僕を、アキヒトは立ち上がって冷たい目で見下ろした。
「俺には幸せになる権利があるんだよ。
邪魔するならお前だって容赦しない。
頼むから俺にそうさせるなよな」
アキヒト。
本気で僕を遠ざけたいと、この時から思っていたの?
僕の目が苦しかったの?
それならオアイコだよ。
僕だって苦しかったんだ。苦しむ君を感じるのが苦しかったんだよ。