泣きながら、目を覚ました瞬間僕はアキヒトが死んだことを知っていた。
けれどそれはある意味では間違っていて…アキヒトは目覚めない…そう、植物人間になっていた。
数日後、病室に入るとそこに彼がいた。
安らかに、静かに。
彼の心を置き去りにした脱け殻だ。
僕は座って話しかける。
ねえ、帰っておいでよ
人形みたいに寝かされているその姿は、あの日のボロキレみたいなアキヒトよりも一層生気がなかった。
死にたいのに生きたい。
そう言ったアキヒトの望み…叶ったと言えるの?
あの夏のなかで、彼の時は止まっているんだろうか?
帰り道僕は、タンポポを見つけた。
その葉をむしって僕は呟く
僕はヤギだ!
そうして口に突っ込んだ。
何回も噛みながら、溢れてくる涙を袖で拭った。
飲み込んで、空を見上げた
いつかアキヒトが帰ってきたら教えてあげなきゃ。
僕にだって食べれたよ。
夏の風が吹いて、逃げ水の先の道をみる。
君が右手を振り上げて
振り返って僕をみる。
もうすぐ夏も終わりだ。
きっと君は帰ってくる。
だって君は
史上最悪な嘘つきだから。