「行かないですよ、どこにも。ね?だから…」
張り詰めていた糸が切れたみたいに先輩は泣き出した「アキヒトが帰らないのは幸せだから。現実より、あっちの方が幸せだから。
僕は生きていてここにいるのに。
僕ね、君とこういう風になりたくなかった。
だって、君だって、いつ失うかわからない…
ぼ、僕を置いて…消えてしまうかもしんない。
僕はもう…大切な人を失いたくない」
俺は抱き締めた。
強く強く強く。
怖がりなのは同じだったんだね、先輩。
大丈夫、俺は貴方のそばから離れません。
ぐすぐす鼻ならして、小さい子みたいに泣きじゃくる愛しい人。
嘉納先輩はバカだ。
前言撤回してやる。
俺はあんたの代わりはしないよ。
俺は俺として、この人の傍にいる。
絶対に離さない。
あんたが目覚めても、この人があんたを愛していても諦めない。
先輩は赤い目をして、ニコッと笑った。
「男同士とかはいいやって思っちゃうのは投げやりかなあ…」
俺は吹いて、先輩の額を弾いた。
「初めから、んなのどーでもいーんだよ、先輩」
俺は先輩の傍にいて
一緒に歩く。
ずっとずっと、一緒に歩いていく…。