初対面で、言ってくれんじゃん…。
「そうですか、じゃ、僕は忙しいんでね」
構ってられっか、こんな変なやつ。
茶髪兄ちゃんはオイオイ、と俺の車椅子を掴みやがった。
「ケガさせといて名前も聞かないのかよ?」
「…すみませんね、お名前は?ご住所と合わせて教えて貰えればあとでお詫びの品でも送ります。
病院に行かれるなら治療費もね」
それが目的なんだろ?
男はニッコリした。
「ま、それでいいけど暫く付き合ってよ。
話題の人間に会える機会なんてそうそうないし」
腹の底からイラついて、仮面を維持する為に心に障壁を張る。
昔からそれは得意だ。
何も感じないようにすること…これが出来なきゃ生きていけなかったしな。
無表情で見上げる俺にびびりもせず、手押ししていく男。
こいつ危ないやつじゃないよな…。
また刺されるとか勘弁だし
「君さあ、高校生だよね」「…はい」
面倒くせえ、面倒くせえ、面倒くせえ!
悠を探すが見当たらない。
「成績優秀、眉目秀麗、モテモテなんだろうね?」
「別に」
なんなの、こいつ。
「なのに満たされない…人を陥れるのはこの年にしていっちょまえってね」