「せめて許してくれ」
…?
「朋子がお前にした仕打ちを。考えてみれば生死をさ迷ったんだもんな。
俺も精神的にお前を追い詰めたんだし…」
「バカじゃねえの?」
俺はベッドにバフッと体を預けながら吐き捨てた、
「許すも許さないもねえんだよ、俺らは。
初めからそういうんじゃねえんだ。
俺は早川を信頼なんてしてなかったし、早川だって俺を憎みこそすれ、本当に愛したりはしてなかったんだぜ?
俺を利用しようとして、利用されて、キレて刺した。そんだけ。
許すも許さないもないね」
圭は黙っている。
「お前には…ないの?
大事な何かが。人を信頼したり、愛したりはしないのか?」
するよ。
した結果が今の俺だ。
「…ないね」
圭は静かに近づく。
「お前は俺が復讐するまでもない」
…。
「自分自身に復讐されてんだもんな」
…そうだな。
俺の唇が歪んで、どうやらそれが微笑みだったらしいことに漠然と気づいた。
悠にしか見せたことのない弱みを敵に見せるのか?
鏡がなくて良かった。
今の俺は、きっと弱い。
守られたいときにはいつだって失った後だと気づく、愚かで孤独なガキなんだ。