全てさらして、沈黙する圭に俺は何て言えばいい?
もともと仕組まれた出会いで、駆け引きで、敵だ。
厄介払い…いまなら出来る…。
してしまえ、と俺のどっかが囁く。
弱味を見せた人間を側に置いておくとお前はどんどん弱くなる。
悠が、いい証拠だ。
寂しいという感情を悠が引き出した。
圭はこの先、お前にどんな感情を植え付けると思う?
…違う…。
俺が怖いのは…。
すがることだ。
すがって振り払われることなんだ。
愛してる、って言いながらあの女は俺を捨てた。
あの男は愛してるって言いながら俺を女みたいに犯した。
愛してるって言いながら、悠は俺だけのもんじゃない
圭は?
数少ない本当の俺を見透かす人間。
両腕を強く回して、ベッドで俺は震えてる。
自分自身に復讐されてる。
欺いてきた人を、いま初めて思った。
俺には人を不幸にしても幸せにする力はない。
それなら圭も。
…。
「圭」
俺は、背筋伸ばして、圭をみる。
「俺の前から消えて」
病室の戸が閉まる音を聞いた瞬間、俺のなかの何かも戸を閉めてしまった。