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予感 1

輪廻  2010-09-19投稿
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美紀は戸惑った気持ちのまま、
指定されたホテルの一室で男を待っていた。


1年前からメールだけのやり取りで過ごしていた相手と、ついに対面することになったのだ。
顔はおろか、年齢、職業もお互いに分からない。
美紀自身も、既婚者である事は告げていない。


結婚して3年、まだまだ外見も内面も若い美紀を、美紀の夫は気に入っていた。

度が過ぎた愛妻家の夫は、
美紀を家庭に閉じ込め、
育児すらさせたくないらしく、
避妊を徹底していた。


男と逢う理由は単に言ってしまえば、
欲求不満だからである。


しかし、美紀からすれば、何かの間違いで妊娠しても構わないという覚悟でいた。


(このまま夫に従っていたら、いつまでも子供が……)


その時、ドアをノックする音がした。


「!……は、はい」


美紀は、余所行きの黒いワンピースをひらひら揺らしながら、ドアに向かった。

開けるとそこには、若い男性が立っていた。

「美紀…さん?」

「はい、そうです」

「思っていたよりずっとお若いです」

美紀の方も、思っていたより相手は若かった。
お世辞でも美紀の頬は紅く染まった。

「入ってください」

静かにドアを閉めると、美紀はもう一度相手の男性をまじまじと見た。

「功一郎(コウイチロウ)さん…?」

「はい、名前からしてもっとおじさんだと思いましたよね?」

「…え、ええ」

「19です」

「やだ…一回り違う」

「本当に?全然見えません。大学生くらいに見えるな…」

話している間に功一郎の手が、美紀の背後にまわり、ドアの鍵をかけた。

「大学生だなんて…化粧のせいです」

「そうなんですか?」

功一郎は美紀の顔を見つめた。

美紀はたまらず目を逸らし、
ベッドに座った。

「リラックスしましょう?お互い、メールの時みたいに」

「そうですよね、ごめんなさい。あんまり若い方だったから…急に緊張してしまって…」

美紀は功一郎が淹れてくれた冷たい珈琲を、両手に包んで、膝の上においた。
カップの中を眺めると、不安そうな顔をした自分が映っていた。

「珈琲。お嫌いですか?」

「あ、いいえ。そんなこと…」

「美紀さん…リラックスしてください」

功一郎は、美紀の手からカップを取り上げ、テーブルに置いた。

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