「どういう意味?」
絡み付かれた腕に力がこもる…小早川自身の何か…柔らかな香りに尋常じゃないくらい高鳴る鼓動。
「ここでのことは全て君の頭のなかで起こった妄想…俺は関与してないし…ってこと。わかるよね?
君が何を言っても、世間は俺を指示するでしょ?」
ああ。
要は「秘密」ってことか。
元々話す相手なんていやしない。
小早川は素早い動作で正面玄関を鍵を使って開けた。
僕が唖然としているうちにさっさと引き入れてしまう
「…驚いた?
まだまだ、こんなもんじゃないよ」
にっこりする笑顔は邪悪なほど無垢。
こっち、と引っ張られてついたのは
多少ホコリを被ったロビーだ。
薄暗い…。豪華なソファなどがそのまま残されている
「廃墟って、魅力的だよね…ねえ」
語尾が掠れた。
小早川が僕をいきなり、目の前のソファに突き倒した
そして倒れた僕の腹にまたがって見下ろした。
「俺が、嫌い?」
とびきり嬉しそうに聞く。
僕は頷いた。
「なら…壊して。英士…して、何回も何回も、壊していいから」
いいながら、小早川はコートを剥ぐように脱いで床に放った。