わかった。
肌寒い日曜の朝。
頼れる情報網から導けた結論。
小早川理央の兄が、犯罪者らしいこと。
その事件のせいで引っ越してきたこと。
小早川の秘密。
そこに根深い何かがある。
寝転がり、天井をみあげていると携帯が震えた。
暇なら
きて
僕はゆっくり起き上がり、ポケットに携帯をしまう。
行くよ。
どこへでも。
爽やかな朝の匂いも、澄んだ青空も、鳥の囀ずりもいらない。
僕にとって世界は理央によって形成されている。
今でも、いや、より一層僕は小早川が憎い。
僕をこんなふうに侵食し、食いつくした魔猫。
こうして彼に近づいていく度に何かを忘れ、失っていく気がする。
僕にもあっただろう、アイデンティティーや思い出が虚ろな空っぽに変わり、そこに小早川が流れ込む。
こんな風にはなりたくなかった。
それでも時々あの夜の
「英士だから」
を思い出す。
何故、僕だったんだ?
何度犯しても答えはでない
白い身体を汚す度、汚れていくのは自分だと解る。
館が近づく。
鍵を握りしめる。
彼のいる場所へ
僕は向かう。