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予感 30

輪廻  2010-10-17投稿
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翌朝は昨日とうって変わって、冷え込んでいた。
美紀は寒さにうっすら目を開け、
隣にいる功一郎に寄り添った。


守たちの出張先も同様だった。
先に起きた守は、成美にもう一枚ブランケットをかけてやった。

成美は無防備な寝顔で、
少し微笑んだように見えた。

しばらくして服を着ていると、どこにあったのかバスローブを着た成美が起きてきた。

「おはようございます…。風邪引くかと思いました」

「おはようございます。本当ですね。大丈夫ですか?」

「はい………今日は昨日よりもっと急いで、あさってには終わらせましょう!」

「やる気ですね、頼もしいなぁ。朝食は下のレストランでどうですか?」

「いいですね!」

こちらに来る前の2人とはまるで違う信頼関係が築かれていた。
少数精鋭の守たちの会社では、ほとんどの社員が顔見知りだが、勿論ここまで深く関わり合うことはない。

「美味しい、朝からホットケーキなんて贅沢」

「作ったりしないんですか?」

「料理は軽いものしか…それにお菓子とかこういうものは作ったことがなくて…」

「今度試しに作って下さいよ」

「はい!是非……」

その瞬間2人は、はっとして、
気まずい沈黙が流れた。

―今度、は無いのだ。
こんな甘いひと時は、来ないのだ―\r

成美の食事の手が止まった。


「無神経でした…すみません」

守は謝った。

「ほ…ホントに!無神経……です…よ」

またしばらく沈黙が流れた。

成美は顔を伏せた。

ぽたぽたと雫が成美の伏せた顔からこぼれた。

「成美……」

「ごめん…なさい……急に…あなたと…会えなくなるって…思ったら…」

栄転する自らの身では、かけてやる言葉も無かった。
ついて来いという言葉を口にする資格もなければ、口にする意味も無かった。

お互いに既婚者。

出会った時から決まっていた事だった。

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