なんにもする気が起きなくて、僕は寝ていた。
夢ばかりの浅い眠り。
理央の泣き顔…。
もう、泣くなよ、と手を伸ばして目覚めた。
痛いくらい、理央が好きだとあの日…いや、ずっと知っていた。
それは春臣の形代だったと聞かされ、殺してと哀願されてもなお変わらない。
理央は僕に惹かれていた、と言った。
それはきっと本当だ。
それならあの手を離すべきじゃなかったのか…。
僕はずっと、あの日からお守りのように握っている鍵を目の前にぶら下げた。
クラスでは相変わらず輝く理央。
僕らはお互いの存在を感じながらもすれ違う。
窓際に行き、濃い、藍色の…紺碧ともいえる空に瞬く星を見つめた。
現実に存在するのに触れられない星のように、胸のなかでチカチカと灯る明かり
僕はコートを羽織り、足が向かうに任せた。
行き先は知ってる。
青松館。
レトロなたたずまいのこの館に入り、埃っぽいソファーに腰を下ろした。
何度も身体だけ繋がった場所。
身体だけじゃないと信じたかった。
目を閉じて。
しんとした部屋で1人。
僕はハッと体を起こした。