翌朝は、三人とも寝不足だった。
蓮一は、真希を抱き、
その上、真菜と寝てしまった事を悔いており、
双子は、お互いに気まずいのか口をきかなかった。
登校中も、三人とも無言で、
今日の空のような重たい空気が流れていた。
学校で真菜は、早くもできた友達数人と、昼休みに学生食堂で他愛の無い話をしていた。
「…だよねぇ〜!笑っちゃうよ!そうだ、真菜は!?」
「え??」
「もう、ちゃんと聞いててよ〜。
気になる男子!いないの?」
「!!」
「!あ、赤くなった〜!」
「いるの!?誰?誰?」
「い、いないっ!いないよぉ〜!」
質問を聞いた真菜の心臓は、
苦しいほど早く鼓動していた。
一方、真希はクラスの委員長を任され、
男子生徒の副委員長とともに委員長会議に出席していた。
「………というわけで、以上で今日の会議を終了します。お疲れ様でした」
「…仲埼さん、仲埼さん?」
真希は肩を軽く叩かれ、気を取り戻した。
「!!っ!ごめんなさい…私!
ぼーっとしてたみたいで……」
「だいじょぶ?顔色、好くないみたいだけど…」
真希のクラスの副委員長、瀬下優(セシタ ユウ)だった。
彼は一年生でありながら、その実力を見込まれ、既にサッカー部のレギュラーメンバー入りを果たし、
成績も真希に次いで学年二位の優秀な生徒だった。
顔立ちもよく、女子生徒の間で入学早々、噂になっていた。
「だ、だいじょうぶ…
本当にごめんなさい…」
自分を選んだはずの兄が、
真菜と一緒に寝ていた今朝の光景が、少し夢に出てきたのだった。
真希は喉が熱くなるのを感じた。
(蓮兄ぃ……真菜……っ!!)
「仲埼さん?」
優が真希の顔を覗き込んでいた。
「きゃあ!!あ………」
まだ会議室を出ていなかった生徒の何人かが、一斉に真希に顔を向けた。
戸惑う真希を慌てて、優がフォローした。
「あ、はははっ。なんでもありませんから!」