しんとした空気。
雨は帰ってこない。
月明かりもなく…
寝息も…ない。
背中合わせに寝ながら、どうにか思考を止めようと瞼を閉じていた時、「起きてますか…?」と小さな呟きが聞こえた。
「ああ」
海斗はため息まじりに答えた。
「寝れないんです。疲れてるのに」
「同じだよ」
簓が身じろぎし、こちらがわを向いたのが気配でわかった。
背中に感じる、彼の視線。
「静かすぎるな」
「…ええ」
俺も振り返ろうか…。
海斗は苦笑した。
何を迷う?
男なんだぞ、相手は。
しかも出会ったばかりの。
「俺も1人暮らしで…俺が消えたって誰も心配なんかしないかもしれない」
哀切を帯びた口調に、思わず寝返りをうち、正面へ向き合った。
「勉強もそこそこで、ごく普通な大学生なんです。
惜しむような人間じゃないから…時間を大切にしていなかったから…捕まったんでしょうか?
これは罰なんですか…?」
「簓」
それは衝動的だった。
反射的とも言える。
両手で守るように、彼を腕の中に収めていた。
堪らなく怖かった。
2人はお互いにしがみついて肌の奥の温もりを感じていたかった。