「暗闇ってのは気が滅入るね…」
ぼそぼそと買い置きのパンを二人で食べ、なんとか会話を絞りだそうとする。
簓は思ったより元気だが、心配気な顔に変わりはない
時計も止まっていてどれだけ時間が経ったのかもわからない。
「今日…いや、今日って言っていいのかな…
んと、何しましょうか」
簓はクリームパンを牛乳で流し込み、微笑んだ。
不思議だ。
海斗はまじまじと簓を見つめる。
昨日、というか眠る前より遥かに落ち着いている。
「なんだかね」
それに気づいて、簓が言う
「わけがわからなすぎて夢のような気がして。
じたばたしても始まらないんで…」
繊細なんだか、たくましいんだか…。
起き抜けにキスしたくなったことを唐突に思いだし、熱い珈琲で火傷しそうになる。
すっかり寛いでいる簓の横に腰をおろす。
顎に手をやり、髭が延びていないことに気づいた。 どうやら何もかも「進まない」ことにしたんだろう。
永遠に?
…まさか。
「さあ、どうするか」
「ただでDVDでも借りますか?」
「それも、いいね」
全く、なんだか夢のようだ