「矢倉さん…」
揺さぶられて、まどろんでいたことに気づいた。
常に暗いから寝たいときに寝るしかない。
そして食べたい時に食べる…まるで動物だ。
膿んだ生活だ。
「風邪ひくよ?」
体感的にはきっと一週間は経っている…気がする。 他の電化製品は動くのに時計は動かない。 象徴的だ。不可思議だが、俺の知ったことじゃない。
海斗は伸ばされた簓の手を掴んだ。
日を重ねるごとに、生きている感覚が薄れる。
だが簓と触れあうと僅かに実感できる。
不意に、驚くほどなんの脈絡もなく、簓を引き寄せた
「矢倉さ…えっ?」
引き寄せて、抱き締めていた。
どうせ閉じ込められているなら、していけないことなんて何一つありはしない。
「ちょ…な、何で」
くるり、と向きを変え、簓を組み敷く。
「わからない」
海斗の言葉に、簓が睨んだ
「ねえ…ちょっと…困る」
…こいついつから敬語やめたんだっけ?
「いいじゃないか…どうせ俺たちだけだ」
「最低ですね」
ああ、そうだとも。
俺の方が怖いんだ。
だから忘れたいんだ…この現実を。
海斗は目を開けたままの簓に唇を重ねた。