海斗の荒い動きに、悲鳴もでない。
簓はうつろな頭で否定していた。
この状況の全てを。
こんなの現実なわけ…ないよ…。
でも苦痛の向こうに垣間見える快楽の波が、自意識を飛ばしていく。
嫌だ、こんな…。
「簓…」
掠れた矢倉の声を背中に聞き、憎いと同時に刺すような痛みが襲う。
…それと、快感が。
挿入される度、痺れるような気持ち良さで頭がおかしくなりそう。
女みたいな、情けない声は本当に自分のもの?
俺、おかしい…。
「あ…ぁぅ…」
いいっ、って叫んでしまいたい。
理性が消えていく。
海斗の動きはより激しくなる。簓はもう唇を開いて断続的に喘ぐだけ。
二人はただ、ひたすらその時を待っていた。
白く、真っ白く果てる時を待っていた。
そのあとは知らない。
知りたくはなかった。