外に飛び出した二人は道路の真ん中に立ち、顔を見合わせた。
「海斗、温度が…」
「ああ」
ここにきてから一定だった温度が変わっていた。
「寒い…」
簓の震える肩を抱き寄せ、耳障りな音を振り払うように首を振った。
「どうなってんの?」
ガチガチと歯を鳴らしながら簓は青ざめていた。
「上着とってくる」
二人は取ってきたジャケットに身を包み、それでも寒さに白い息を吐きながら佇んでいた。
「怖いよ…」
ザザ…ザザザ…
どんどん音が近づいてくる
「逃げた方が…」
言いかけた刹那、漆黒の闇空に閃光が走った。
唖然としたのはその色だ。鮮やかな赤い閃光。
切り裂いた傷口にしたたる血液のように禍々しい赤。
「海斗!」
音はいまや騒音と化し、簓は両耳を塞ぎ叫んだ。
風が吹き始めた。
あれほどに待ち望んだ変化は急激、強烈な形で二人を取り巻いた。
ザザザ
ノイズの音、閃光、風。
二人は小さかった。
余りにも矮小でとるに足りなかった。
寄り添うしかできず、さらに地盤が揺れ始めたアスファルトから動けずにいた。
ただ、お互いの手を、身体を離さずにいた。