「ちゃ………………リルナちゃん……!!」
耳鳴りの向こうで、微かにマスターの声がして、リルナはぴくっと指を動かした。
「…………!……」
「喋らなくて良いから!
すぐにシャワー浴びましょう!」
抱き上げられたリルナは、そのまま眠りに落ちそうになった。
小便をかけられ、残りはあと十数人というところまでは覚えているのだが、とリルナは思い返していた。
不意に温かいシャワーのお湯が、体を包んだ。
マスターが丁寧にリルナの体を洗い始めた。
「私がリルナちゃんに近づけた頃には、もうあなたは意識が無かったの。それでも、お客さんは満足してくれてたみたい」
リルナは悔しさと情けなさから、静かに涙を流した。
「……」
「…泣かないで。正直、規格外だったのヨ…。明日からの分は日を改めてって事にさせてもらったわ…。今回は中止か、もう一度他のコに頼むしか……」
リルナはマスターの腕を、目一杯掴み、眼で訴えたが、マスターはリルナの手を優しくとった。
「気持ちは嬉しいワ。だからと言って、従業員にこれ以上無理はさせられない」
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
涙を流して顔をくしゃくしゃにしても、リルナの体をマスターは静かに洗うだけだった。
しばらくして、少し声が出るようになった。
「マスター……。ごめんなさい…」
「いいのヨ。今日はなんとか凌げたじゃない。記録更新ヨ」
「明日の……お客様は…?」
「お金はまだだから、事情を説明してキャンセルになるわネ」
「ごめんなさい……ごめんなさい…」
「いいから、明日も学校ヨ?早く寝なさい」