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ラック・ガール #43

輪廻 2011-03-03投稿
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自動販売機で飲み物を買った蹴人は、
彼女役をリルナに頼んだ公園に来ていた。
リルナはブランコに座っていた。


「……!!!」

蹴人は缶ジュースをリルナの頬にくっつけた。

「ショックで声が出るかと思ったけど、ダメか…。…………風邪……なんだろ?」

リルナの瞳が切なく潤んでいるのが分かった。

「本当は…違うのか?」

俯いたまま答えを濁すリルナに、
蹴人は立ったまま優しく語り出した。

「………親父が、藍原のこと…知ってるかもしれないって…。
どういう意味かは分からないし、
今までだって、藍原のこと…
俺も知らなかった……。

今は、それが凄く嫌なんだよ。
俺に出来ることが……無さすぎる」

リルナは静かに涙をこぼした。

「お前の声が出ないワケも、
今、泣いている本当のワケも……。
俺は知りたい」

「…………………」

静寂に包まれた公園には、次第に落陽が射し込まなくなってきていた。

不意にリルナは立っている蹴人に飛び付いた。

もし声が出たとしても、何も言えなかっただろうとリルナは思った。

「…………」

「…………」

蹴人は力強く、リルナの小さな震える体を、抱き締めた。

「……………」

「…………好きだ…」

応えることも、答えることも、
今のリルナにはできなかった。




「落ち着いたら、ウチに来てくれないか?
父親に会って欲しい。
多分、藍原に…………、
リルナにとって大切なことを、
親父が知ってる…。
それがなにか、なんで親父が知ってるのかも俺は知らない。
でも、知りたいんだ。
大切な人のことだから…。
……頼む」


リルナは力強く優しい蹴人の腕のなかで、
ずっと泣いていたかった。

しかし、もう目を背けることができない”なにか”と、向き合う時が来たのかもしれない。

「………………!」

涙を拭い、
リルナは頷いた。

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